石膏デッサン


 学生のためのデモンストレーションとして、久々に石膏デッサンを描いてみました。

いわゆるコスチュームの胸像であるアポロです。
石膏像は裸の石膏像(ヘルメス・マルスなど)とコスチュームの石膏像(ブルータス・パジャント・ジョルジョなど)に分かれます。
私は正直な所、コスチューム系の方が得意でした。
全部同じ石膏で出来ていながら、髪の毛の部分と衣服の部分と肌の部分と目鼻立ちの部分と、質感の違いが描いていて楽しいのです。
それは絵画的な要素が大きい、ということだと思います。
裸の石膏は、どちらかと言えば彫刻科向きだと思っております。

ということで、アポロ。

まずは構図・形取りです。

受験時代はデスケル(透明な構図取り用具)を使用して慎重に形を取ってましたが、デスケルは片目で見るため、どうしても形が狂います。 なので、測らないでアタリを取って行きます。
結節点を布置していきますが、調子もある程度入れます。
その方が形を取りやすいからです。
これで1時間の仕事。
胴体が大きいようです。

肩の位置を下げ、胴体の切り口も上げて、身体を小さくし、全体のバランスを良くします。
これで大体の形が取れました。
2時間経過です。

静物デッサンでもそうですが、私の考えでは、特に受験の場合、凝ったテクニックなど必要ではありません。
根幹の部分が出来ていれば高得点が取れます。
ですから、鉛筆だったら4B一本でベースのほとんど描いてしまった方が良いし、木炭ならNo.360だけでシンプルに進めた方が混乱しません。
No.360は太いので、細かい所はあまり描けません。
でも受験では細密描写を要求してはいません。
それにベースの段階で細かく描いても迷走するだけ。
太い木炭一本で行けるところまで行きます。
なるべく擦ったりもしません。

これで頭部、首、胴体の形態感も出て、ベースの段階完了です。
3時間経過です。

我慢出来ないところまで調子を乗せて、これ以上描き進めることは難しいな、と感じたところでガーゼを用いて陰のパートを思い切り擦ります。
ここからディテール(細部)の作業に入ります。
こする作業は10分もあれば完了するので、ここから2時間かけて完成まで持って行きましょう☆

これで一応完成とします。
擦った段階から次に何をやったかと言えば、練り消しゴムで陰の中の明るい所=反射光部分を”描いていく作業”です。
さらに髪の毛の入り組みや回り込み、目鼻立ち、衣服の複雑な形、そして身体を面的に細分化していく作業。

結局、石膏デッサンで何が要求されているか、と言えば、そのデッサンから元の立体物を再現出来るか?ということなのです。
つまり三面図に付随する見取り図のこと。
見取り図に明暗法による調子を乗せたものが石膏デッサンとなります。
いたってシンプル。
ここは中心に据えないといけません。

派生的に絵画的要素が出て来ますが、それらは先生とのやり取りで学んで行くことが重要ですね。
最終的に白い部分と最暗部分を順序付けて、黒の流れも構築して終了です。

今回は3時間でベースの仕事をして、2時間で後半戦を戦いました。
全5時間。
久々に(5年ぶりくらい?)石膏デッサンしましたが、私は受験生ではないので、楽しく描けました。
受験生はこうした力を付けるのにある程度時間と忍耐が必要なため、苦しい道だと思います。
しかしいったん身につけた力は一生モノだし、AIとかの時代になっても揺るぎない武器となり得ます。

頑張りましょう!